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フライ・オットー

テント構造のパイオニア

フライ・オットーと言えば吊り屋根のテント構造建築物で有名ですが、1972年に開催されたミュンヘンオリンピックの競技場も吊り屋根構造でした。
1925年にドイツ、ケムニッツ近郊で生まれたオットーは、第二次世界大戦で空軍兵として参戦し、建物が破壊されていく様を目の当たりにし、建築物の脆さと儚さを感じたと言います。
フランスで捕虜になった際、捕虜収容所建設の水回りの工事に従事させられましたが、あらゆるものが不足していた戦時下では満足な住まいもなく、急きょテントで住まいを整えざるを得ませんでした。

オットーのテント構造物への関心の起点はそこにあったと言われており、必要から生まれた建築とも言えます。
テント構造の場合素材を軽量化する必要がありますが、オットーはその点においても世界的権威で、木造格子シェルなどの構造をも開発した軽量構造の第一人者です。
2000年のハノーヴァー万博の日本館でも軽量構造システムが効力を発揮しました。

日本の建築家坂茂氏との共同で建築されたパビリオンは、紙で作られた管のフレームに光を通す膜を張って作られました。
これによりコストの削減と共に軽量化にも成功しました。
建材に紙を使うというのはかなり画期的なことで、世界中が注目したのです。

日本への影響

日本では格子型の木造構造は良くみられるものですが、実はオットー氏の発案によるものなのです。
それを国内でコピーが出回り、オットー氏の功績が正当に評価されなかったという研究者もいます。
木造格子シェル構造(貝殻の様な曲面板構造)というのは日本でも好まれる建築様式でした。

自然科学と建築

オットー氏は2015年に亡くなりましたが、亡くなる数年前まで都市計画に関する本の執筆がライフワークとなっていました。
建築家にとって景観との共存は避けて通れない課題です。
巨大建造物の建築は、自然景観を壊すことを意味し、大量の建材を自然界から搾取し土地を切り開き、結果として自然破壊につながるものでした。

その建材を軽量化する事でコスト削減のみならず、自然破壊を最小限にとどめる事で、自然と建築の共存を可能にしたのです。
長年自然科学の研究をしてきたオットー氏は、それを建築に反映させたことで業界に新たな革命を起こしました。
その業績をたたえられ、2015年にプリツカー賞という、建築界のノーベル賞に当たる賞を受賞したのです。

オットーの哲学奥が深く、業種を越えて多くの人々に影響を与えています。
それは、人間が作り出す建造物が自然に刃向うものであったとしても、自然の物体である人類が作り出したものならば、それも自然の一部だと考えられるというものです。
人間は自然の対極にあるのではなく、人間もまた自然の一部であり、人類が作り出したものもまた自然の一部という哲学は、医療分野などにも当てはまるのです。

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