見えない部分の安全性
建物の表側に見えるデザインを決めるのが意匠設計なら、見えない部分で安全性を支えるのが構造設計です。
構造設計とは、基本設計のあとに具体的に決められる実施設計の中の一つで、その建築物が災害や経年劣化によって危険がないように構造上の安全性を確保するために行われます。
構造設計の担当者は、その建築物が作られる土地の地盤安定性や高度、傾斜、また四季を通じての気候など多面的な土地属性を考えて安全な建築物を作るための条件を提案していきます。
特に最近では建物の耐震性について社会的に大きな関心が持たれていることもあり、大きな地震が起きたときにその建物がどのような動きをすることになるかを細かく計算しつつ必要な対策をとっていくことになります。
設計手順について
構造設計をするときに作成をするのは「断面図」「軸組図」「伏図」の三種類です。
断面図とは、建築物が完成したあとに行われる建築確認の時に必ず必要になる重要書類で、そのた建物の天井高などを確認するものです。
軸組図とは、縮尺1/100程度の大きさで骨組みを横からみたときの姿図のことです。
伏図とは、構造的な骨組みである柱や梁といった建物を支える重要な支柱部分を平面図上に示したものです。
この3つを合わせることで、立体的にその建物の主要部分がどのような構造となっているかを把握することができ、安全性を確認できます。
構造図面の作成は、物件の規模や建築方法によって大きく異なり、木造・RC造・S造などによって必要な書類などが違ってきます。
RC造やS造の場合には、鉄筋詳細図(鉄骨詳細図)を作成し、建物内部にある鉄筋の1本ずつを細かく記載していくことになります。S造の場合には柱や梁の部分の接合部分はどのように組まれているかなども細かく描いていかなくてはならないことになっています。
意匠設計に比べて地味な仕事のように見える構造設計ですが、その建物の本当の価値を決めるのはまさにこの構造部分がどのように作られているかということにかかってきます。
かつても国内数カ所で起こった大震災においても、一見同じように見える建物のうち、あっさりと倒壊をしてしまったものと、かなり頑丈に残った建物とがありました。
いかに美しい意匠設計による建物も、ちょっとした地震や台風ですぐに倒壊してしまっては建物としてよいものとは言えません。
構造設計の担当者は、意匠設計における美しい造形を維持しつつも、何十年に渡っても使用をし続けることができるような緻密な計算による構造を提案していくことが求められるのです。