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ザハ・ハディド

イラクを代表する女性建築家

今の日本で、ザハ・ハディッドの名前を知らない人は少ないでしょう。
東京オリンピックの新国立競技場のデザインはまるでSF映画に登場しそうなフォルムで、巨大構造物でありながら曲線を描く天井は建築不可能な様に思われました。
実際ザハのデザインは斬新過ぎて、建築出来ないままに終わることも多く、現役でありながら伝説となっている建築家です。

脱構築主義と言われる建築家で、建築技術がデザインに追い付いていないため実現されない建築家の古都を、アンビルトと言います。
ザハ氏の多くのデザインが建築されずにいる事から、アンビルトの女王とまで言われています。
新国立競技場のデザインを実現するためには建築費用が莫大過ぎることから立ち消えになったことは記憶に新しいでしょう。

ザハ氏を生んだ環境

イラクと言うと日本人にとってはイラン・イラク戦争やフセイン大統領の処刑など、血なまぐさいイメージがあります。
今でも女性はヘジャブと呼ばれるスカーフの様なもので髪を覆わなければなりませんし、肌の露出は制限されています。
しかし、ザハ氏の写真を見る限りヘジャブを着用している様子はありませんが、実は現在はロンドン在住なのです。

バグダッドで生まれた彼女は、シュメール文明の遺跡に触れて建築に興味を持ったと言われています。
イラクはアッシリアやバビロニアなどメソポタミア文明を生んだ土地であり、古代遺跡の宝庫でもあります。
古代文明の遺跡を見ると、水洗トイレや下水道が完備され、想像以上に都市のインフラが整備されていたことが判ります。

アラブというのは今でこそ戦争のイメージが強い民族ですが、数学を生んだ民族なのです。
その遺伝子を受け継いでいるのは間違いありません。
ザハ氏の一課はフセイン政権が確立した時に国外に脱出し、ロンドンの建築専門大学で建築学を学んでいます。

アンビルトの女王の代表的な建築物

いくらデザインが斬新でも建築されなければ意味がありません。
勿論アンビルトの女王と言えども代表作はたくさんあり、その多くはヨーロッパにありますが、イギリスのマギー癌福祉センターは高く評価され永久構造物となっています。
他にも工場、スキーのジャンプ台、博物館、大学など多岐に渡っており、そのどれもが構造物とうこうあるべきという常識を逸脱しています。

中でも香港理工大学のジョッキー・クラブ・イノベーション・タワーは、まるで自然の岩盤か地層を思わせる形状で、建築できたことが奇跡とも思える建物です。
ウイーン経済大学のキャンパスも、まるでせん断変形しているかの様な建物で内部がどの様になっているのか不思議に思われるデザインです。
ローマにある国立21世紀美術館は、まるでだまし絵を見ている様な錯覚に陥る構造で、至るところに不規則な曲線があり、高い建築技術を要したことは想像に難くありません。

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