建築模型士とは
建築物の設計図をもとに、その外観や内部構造を縮小した模型を作る専門家のことです。
建築模型士の仕事の内容は、以下のようなものです。
- 建築物の設計図や写真などを参考に、模型のサイズや素材、色などを決める。
- 模型に使用する素材を切ったり、貼ったり、塗ったりして、形や質感を再現する。
- 模型に照明や動きなどの演出を加える場合は、電気回路やモーターなどを取り付ける。
- 模型の完成度や正確さをチェックし、必要に応じて修正する。
- 模型をクライアントや設計者に納品し、説明やフィードバックを受ける。
建築模型士は、建築物の設計段階やプレゼンテーションにおいて、重要な役割を果たします。
模型は、建築物のイメージを具体的に伝えるだけでなく、設計上の問題点や改善点を発見するのにも役立ちます。
基本的にスチレンボードでの模型製作が主流ですが、近年ではCAD技術によってPC上で仮想的に模型を作り、3Dプリンターで立体物として出力する方式に変わってきています。
そのため、建築模型においては変革期に差し掛かっているといえるでしょう。
建築模型の種類
建築模型は、様々な目的や用途に応じて、以下のように分類されます。
プレゼンテーション模型
プレゼンテーション模型は、建物のプレゼンテーションに用いられる建築模型です。
クライアントや関係者に対して、建物の外観やデザイン、特徴を視覚的に説明するために使用されます。
この模型は実際の建物の外観やディテールを再現し、建物の完成予想図をクライアントにわかりやすく伝える役割を果たします。
スタディ模型
設計内容を確認し、外観のバランスや大きさなどを検討するために作成されます。
建物の概要や配置を理解し、設計の方向性を確定する際に役立ちます。
そのため、塗装や装飾は行わない白模型で簡易に製作されるのが一般的です。
展示用模型
展示用模型は、建築物の完成形を多くの人に見せるために制作される模型です。
建物の細部まで正確に再現されており、柱や窓などが忠実に表現されています。
制作には多くの時間と労力がかかり、建物のデザインや特徴がより詳細に表現されます。
建築模型士になるには
建築模型士になるには特別な資格や免許は不要なので、さまざまな働き方があります。
とはいっても、建築や建築模型の技術や知識について知らない人が建築模型士として働けるわけではありません。
特に重要なのは模型図面を読めるかどうか。建築模型は実際に作られる建物のミニチュアですが、縮尺が異なるだけで同じものを作る必要があるためです。
実務経験を積むことも重要です。建築模型士は、建築事務所や建築模型制作会社などで働くことが多いですが、フリーランスとして独立も可能です。
建築模型士の仕事は、細かい作業が多く、時間や予算の制約が厳しいこともあります。しかし、自分の手で建築物の美しさや魅力を表現することができるやりがいのある仕事です。
建築模型士に向いている人
建築模型士に向いている人はどのような特徴を持っているのでしょうか。以下にいくつかのポイントを挙げてみます。
細かい作業が好きで、集中力が高い人
建築模型士の仕事は、細部にわたって正確に模型を作ることが求められます。そのため、細かい作業が好きで、集中力が高い人に向いています。
時間や予算の制約の中で効率的に作業する能力も必要です。
建築やデザインに興味がある人
建築模型士は、建築物の設計図を理解し、それを立体的に表現することができる人です。そのため、建築やデザインに興味がある人に向いています。
建築模型士は、建築家やクライアントとコミュニケーションをとりながら、模型の要望や意図を汲み取ることも重要です。
創造力や感性が豊かな人
建築模型士は、単に設計図通りに模型を作るだけではなく、素材や色彩などの選択や配置にも工夫を凝らすことができる人です。
そのため、創造力や感性が豊かな人に向いています。建築模型士は、模型を見た人に感動や興味を持ってもらえるような作品を目指すことも大切です。
建築模型士に必要な資格
建築模型士として働くために必須の資格はありませんが、建築模型作成の知識や技術を身につけるために取得する資格があります。
国家資格は設けられておらず、特定の団体が認定する民間資格です。建築模型士を目指す場合、取得を検討する価値がある資格には以下のものがあります。
建築模型資格検定
建築模型資格検定は、主に実践建築模型認定試験として知られており、建築模型を第三者に対するプレゼンテーションとして各種業務で積極的に使用するための資格です。
この資格は1級と2級があり、2級は設計者の考えている通りに模型化できる能力が求められ、1級は2級で求められているものに加え、より高度な技術、使える模型が作れるかが見られます。
1級、2級ともに受験資格はなく、誰でも受験可能です。申し込みはインターネット上で行い、試験も在宅で行われます。
合格率は公表されていませんが、建築関係に従事している人や学生であれば短期間の勉強で合格できるでしょう。
建築模型技工士インストラクター
建築模型技工士インストラクターとは、建築模型や住宅模型の制作技術を一定以上修めた方を対象に、日本インストラクター技術協会(JIA)が認定する資格です。
この資格を取得するには、資格を発行する協会が行う試験に合格するか、協会認定の通信講座の特別講座を利用するかの二択になります。
受験の資格条件は設けられておらず、在宅受験であるため、誰でも受験可能です。
試験内容は該当月1カ月前に申し込み、翌月の20日から25日の6日間が試験期間で、答案を期限内に提出します。
これらの資格を取得することで、信頼性が高まり、建築模型の専門知識とスキルを磨くことができます。
建築模型士には技術や知識が求められますが、特定の資格が必須とされることは少ない傾向です。
建築模型士の魅力・やりがい
建築模型士の魅力は、まず、自分の手で作り上げた模型が、実際の建築物になるという達成感や喜びを味わえることです。
建築家やクライアントと協力して、デザインやプレゼンテーションの品質を高めることができることも魅力の一つです。
さらに、建築模型士は、様々な素材や技術を使って、細部にわたって忠実に模型を作る必要があります。そのため、常に新しい知識やスキルを身につけることができるというやりがいもあります。
建築模型士は、自分の創造力や技術力を高めるために、常に勉強や研究を続ける必要があります。建築模型士は、建築物の魅力を伝えるプロフェッショナルです。
建築模型士のつらいことや大変なこと
建築模型士にもつらいことや大変なことも多くあります。例えば、以下のようなことが挙げられます。
納期が厳しい
建築模型は、設計段階やプレゼンテーションの際に必要とされるため、納期が非常に厳しいことが多いです。
短期間で高品質な模型を作らなければなりません。そのため、残業や休日出勤が多くなり、体力的にも精神的にも消耗します。
細かい作業が多い
建築模型は、細部まで正確に再現する必要があります。そのため、細かい作業を長時間続ける必要があります。
例えば、窓やドアの開閉機構を作ったり、屋根や壁の質感を表現したり、植栽や人形を配置したりすることも。
これらの作業は、目や手に負担をかけるだけでなく、集中力や忍耐力も必要とします。
技術の進歩に対応する
建築模型は、従来の手作業だけでなく、コンピューターやレーザーカッターなどの機械を使って作ることもあります。
最近では、VRやARなどの技術を使って、立体的に建築物を見せることもできます。
建築模型士は、これらの技術の進歩に対応するために、常に勉強や研究をしなければなりません。
以上のように、建築模型士の仕事は、つらいことや大変なことが多いですが、それだけにやりがいも大きいです。
自分の手で作った模型が、建築物の誕生に貢献したり、人々の感動を呼んだりすることは、他の仕事では味わえない喜びです。
建築模型士は、自分の技術やセンスを発揮して、建築物の魅力を伝えるプロフェッショナルです。
年収について
建築模型士の年収は、経験やスキル、勤務先などによって異なりますが、300万円~400万円程度と言われています。
一般的なサラリーマン全体の平均年収が420万円前後となるので、平均より低い水準といえるでしょう。
フリーランスの場合、月に何個受注したかによって変わってきます。1つにつき数千円~数万円というものが多いようです。
経験とスキルを積み、人脈を築くことで安定して仕事ができ、収入も伸ばせるでしょう。
キャリアパスについて
建築模型士のキャリアパスは、主に以下の3つに分けられます。
建築設計事務所や建築模型製作会社などで勤務する場合
この場合は、経験を積んで技術力や管理能力を高めることで、チームリーダーや部門責任者などの役職に就くことができます。
得意分野や特色を持つことで、より高度なプロジェクトに携わることも可能です。
独立してフリーランスとして活動する場合
この場合は、自分で仕事を探したり、クライアントと交渉したりする必要がありますが、自由度の面でメリットがあります。
在宅ワークで行っている人が多く、模型を作れる環境であれば、どこでも行えるのも魅力です。
建築模型士の将来性
転職・就職市場において「建築模型士」としての求人はほとんどなく、設計補助・支援事務としての求人となります。
ほとんどの企業や設計事務所ではキャリアが少ない新人が模型作りを担当するためです。
まずは設計事務所やハウスメーカー・工務店に就職し、その中で携わることが現実的といえるでしょう。
ただし、現在は建築需要の増加とともに建築模型の仕事への重要性もアップしています。
企業側はコスト削減のため、社員よりもフリーランスへ模型制作を外注することも増えているため、以前に比べ需要は高くなっているといえるでしょう。
さらに空き家対策やリノベーションなども増えています。
そのため、企業や設計事務所などで技術や経験を身につけ、フリーランスとして副業や内職で活動するという働き方もあります。